まぁ、まぁ、そういうことで…
2005年2月28日 TV
↑智世口調でどうぞ。
世中愛叫七話
ついに来たか…という感じの回だった。
すみません、七話って凄い思い入れが深いので二回に分けて語らせて戴きます。最初に言って置いたほうがえぇかなぁ、と思いまして……。
入水自殺を計った現代朔は、矢張り死に切れなかった自分の弱さを責め、夜の海に浮かぶ月を眺める。思い出されるのは、あの日の亜紀の言葉。
「大丈夫だよ朔ちゃん、夜はいつか必ず明けるんだよ。」
その言葉に、朔は失った世界の中で再びあの日のことを思い出す。
入水自殺を計る朔、と言うのは七話のクライマックスシーンに繋がる(亜紀の入水自殺未遂)に繋がる訳だけれど、現代に取り残された朔が、ぼんやりと17年前の美しい廣瀬亜紀の姿を思い出しているだけで涙腺が緩んだ。
この人、本当に死んでしまっている……。
砂浜に倒れこんで咽こんでいる事で「生きている」と実感出来るだけであって、この人の瞳の中には廣瀬亜紀が住んでいる。廣瀬亜紀はもうこの世に居ないというのに。
その現実さえ直視出来ずに17年間辛い思いのまま過ごしてきた男なんて、本当にこの世に居るのかと思ってしまう。実際、私は原作を読んでいても「こんな男、実際には居ないだろうなぁ」と思った。
十数年間も亡くなった恋人の事を想い続ける男なんて空想の中の人物でしか無いと思っていた。同名の映画を観ても、その思いは変わらなかったが七話でようやく「亡くなった恋人を17年間想い続ける男」が実在するかも知れない、と思うことが出来た。
ここまで悲惨で、ここまで濃い三ヶ月間を過ごした相手だ。
六話のラストで「この声の為なら何でもしようと思った。もしも亜紀が笑えるのなら、僕は一生笑えなくていい。もしも亜紀が泣きたいのなら、僕は一生我慢する。もしも亜紀の為に死ねと言われたら喜んで死んでやろう」と過去朔が語っていたけれど、そこまで亜紀のことを想い、そしてこれからも一ヵ月半その想いの強さは止まることを知らなく、最後は狂気的な愛にまで成っていった。そして、亜紀が死んだと同時に朔の心も死んでしまった。
こんな思い出があるのなら、17年も引きずっても当然かも知れないと思えた。
一樹は再び東京に戻るが、自分の誕生日に朔が祝いに来てくれないと悲しむ。そして明希と自分の写真を見て、一樹は一人で松崎へと向かう。
明希の腹に、一樹という子供が宿らなかったら朔と明希は「大学時代の同級生」でしか無かっただろう。心が死んでしまった朔が、初めて他人に生命の息吹を与えたのが一樹なのだ。勿論、一樹の父親が朔ではない。でも実際のところは、朔と言っても過言ではないだろう。
亜紀のいない世界で老人の様に生きている朔に、貴方は生きているんだよと伝えてきたのは間違いなく明希と一樹だ。しかし明希は大人だ。分別もあり、あそこまで重いエピソードを聞かされては身を引いてしまうしかない。けれど息子の一樹は違う。朔が居る世界で生まれた一樹にとって、朔はかけがえのない人だった。
本当の父親ではないと判っていても、朔と一緒に居たいという一樹の気持ちが朔を揺るがすことになる。
そして、明希も、もう一度、廣瀬亜紀と向き合うことが出来るようになる。矢張り、一樹の存在は大きい。
再び過去の朔。
亜紀はビニールの中から一時的だが解放され、病院の庭を歩いていた。そこで、自分と同じ点滴を受けている青年・真島と出会う。
亜紀が真島との何気ない会話の最中、朔が来るまで見せていた不安気な表情は間違いなく点滴の種類の所為だったんだろう。何せ、亜紀は一ヶ月間も辛い治療を受けながらも偽りの病名を教えられているのだから。また、亜紀が「再生不良性貧血」という自分の病名を告げた後の真島の表情が一瞬曇ったのも、勘の鋭い亜紀は見逃さなかった。しかし真島に「一緒の病気だったら大変だよ、俺、白血病だもん」と言われたもんだから余計に不安になる。
ここ、朔が来なかったらもっと早く亜紀が崩壊していただろうな…。
絶妙なタイミングで朔が亜紀を見つけるけれど、真島はとっくに亜紀が白血病だと気付いていたものね。言わなかっただけ、真島は偉い。若い二人の「彼氏です」「朔ちゃん!……彼氏です」という初々しい遣り取りを笑っていたし。
亜紀は真島と仲良くなり、闘病生活の辛さを話しに真島の病室までやって来ると、真島に詩を渡す。その詩は、亜紀が朔と出会ったあの日に亜紀が弔辞で読んだアポリジニの詩だった。
そして真島の持っていた医学書を見て亜紀は愕然とする。
真島は亜紀の辛さを引き立たせる為だけだったの?と思ったが違った。真島の気持ちを受け取った亜紀のアポリジニの絵本が最終話で朔を救うことになるんだから。
朔がわざと持って来なかった(のを察した)亜紀が、真島の机に上にあった医学書を「見せて下さい」と言って真島が一瞬戸惑うんだよね。でも貸す、と言うことは「真実は先に知って置いたほうがいい」という先輩からの助言だったのだろうか。
亜紀が「再生不良性貧血」という病名を医学書で探しあてる、しかしそこには「バカにすんな!」と大きな文字で書かれていた。医学書の持ち主は真島である。つまり、真島も最初は再生不良性貧血という偽りの病名を教えられたのだ。
真島の優しさが現れているのが、それを知り不安になった亜紀に「でも、廣瀬さんがそうだとは限らないよ。現に、再生不良性貧血っていう病気も存在するわけだし。」と言う言葉だったと思う。
次の日、亜紀は病室に来た朔に「私、白血病なんだって。先生に聞いちゃった。」と嘘をつく。亜紀の言葉を受けて動揺し「でも、亜紀の両親も悪気があったわけじゃなくて、」と朔は見事に亜紀のかまに掛かって亜紀が白血病だということをバラしてしまう。
これ、やっちゃうんだよね……本当は知りたくないのに。
亜紀は勘の鋭い子だから誰かを引っ掛けて告知される前に病名を知るとは思っていたけど、まさか恋人にかまを掛けるとは……。でも、ここで亀裂の入らない二人が切ないなぁ。
「嘘つくの疲れたでしょ?」と朔を気遣いながらも不安でいっぱいの亜紀と、完全に落ち込んでいる朔。しかしそんな朔に亜紀は「ありがとう、朔ちゃん」とまで言うんだもの、朔も責める訳にはいかなくなるだろう。
朔は亜紀の両親に本当の病名をバラしてしまったことを告げ、亜紀の両親に感謝の言葉を言われるが朔は更に落ち込んでしまう。
亜紀の両親は、最愛の娘に向かっての白血病という病名の告知という残酷な任務を朔が果たしてくれた事によって、少しは肩の荷がおりたということもあって「ありがとう」と言ったのだろうけど、朔の心には深い傷が残っただろうな……。
最愛の人を苦しめる言葉を放ったのは、他でもない自分なのだから。
その夜、亜紀は病室で修学旅行のファイルを床に叩き落とし、拳を握りながら「何で…何でさ……」と堪えるように泣く。
亜紀って、多分普通の高校二年生より精神年齢が高いし、強気な性格も災いしてか気丈に振る舞うのよね周囲には……。だからこそ、こういう一人の時に爆発してしまうんだと思う。修学旅行になんて行ける筈がないのに、と思った亜紀のやるせなさは筆舌に尽くし難い。
しかし次の日、一時退院が許された亜紀はケロリとした顔で学校へと登校して来る。驚くクラスメイトと谷田部先生。そして勿論、昨日のことを知っている朔。
亜紀ってこういう子なんだよなぁ……。切ない。
続きます。
世中愛叫七話
ついに来たか…という感じの回だった。
すみません、七話って凄い思い入れが深いので二回に分けて語らせて戴きます。最初に言って置いたほうがえぇかなぁ、と思いまして……。
入水自殺を計った現代朔は、矢張り死に切れなかった自分の弱さを責め、夜の海に浮かぶ月を眺める。思い出されるのは、あの日の亜紀の言葉。
「大丈夫だよ朔ちゃん、夜はいつか必ず明けるんだよ。」
その言葉に、朔は失った世界の中で再びあの日のことを思い出す。
入水自殺を計る朔、と言うのは七話のクライマックスシーンに繋がる(亜紀の入水自殺未遂)に繋がる訳だけれど、現代に取り残された朔が、ぼんやりと17年前の美しい廣瀬亜紀の姿を思い出しているだけで涙腺が緩んだ。
この人、本当に死んでしまっている……。
砂浜に倒れこんで咽こんでいる事で「生きている」と実感出来るだけであって、この人の瞳の中には廣瀬亜紀が住んでいる。廣瀬亜紀はもうこの世に居ないというのに。
その現実さえ直視出来ずに17年間辛い思いのまま過ごしてきた男なんて、本当にこの世に居るのかと思ってしまう。実際、私は原作を読んでいても「こんな男、実際には居ないだろうなぁ」と思った。
十数年間も亡くなった恋人の事を想い続ける男なんて空想の中の人物でしか無いと思っていた。同名の映画を観ても、その思いは変わらなかったが七話でようやく「亡くなった恋人を17年間想い続ける男」が実在するかも知れない、と思うことが出来た。
ここまで悲惨で、ここまで濃い三ヶ月間を過ごした相手だ。
六話のラストで「この声の為なら何でもしようと思った。もしも亜紀が笑えるのなら、僕は一生笑えなくていい。もしも亜紀が泣きたいのなら、僕は一生我慢する。もしも亜紀の為に死ねと言われたら喜んで死んでやろう」と過去朔が語っていたけれど、そこまで亜紀のことを想い、そしてこれからも一ヵ月半その想いの強さは止まることを知らなく、最後は狂気的な愛にまで成っていった。そして、亜紀が死んだと同時に朔の心も死んでしまった。
こんな思い出があるのなら、17年も引きずっても当然かも知れないと思えた。
一樹は再び東京に戻るが、自分の誕生日に朔が祝いに来てくれないと悲しむ。そして明希と自分の写真を見て、一樹は一人で松崎へと向かう。
明希の腹に、一樹という子供が宿らなかったら朔と明希は「大学時代の同級生」でしか無かっただろう。心が死んでしまった朔が、初めて他人に生命の息吹を与えたのが一樹なのだ。勿論、一樹の父親が朔ではない。でも実際のところは、朔と言っても過言ではないだろう。
亜紀のいない世界で老人の様に生きている朔に、貴方は生きているんだよと伝えてきたのは間違いなく明希と一樹だ。しかし明希は大人だ。分別もあり、あそこまで重いエピソードを聞かされては身を引いてしまうしかない。けれど息子の一樹は違う。朔が居る世界で生まれた一樹にとって、朔はかけがえのない人だった。
本当の父親ではないと判っていても、朔と一緒に居たいという一樹の気持ちが朔を揺るがすことになる。
そして、明希も、もう一度、廣瀬亜紀と向き合うことが出来るようになる。矢張り、一樹の存在は大きい。
再び過去の朔。
亜紀はビニールの中から一時的だが解放され、病院の庭を歩いていた。そこで、自分と同じ点滴を受けている青年・真島と出会う。
亜紀が真島との何気ない会話の最中、朔が来るまで見せていた不安気な表情は間違いなく点滴の種類の所為だったんだろう。何せ、亜紀は一ヶ月間も辛い治療を受けながらも偽りの病名を教えられているのだから。また、亜紀が「再生不良性貧血」という自分の病名を告げた後の真島の表情が一瞬曇ったのも、勘の鋭い亜紀は見逃さなかった。しかし真島に「一緒の病気だったら大変だよ、俺、白血病だもん」と言われたもんだから余計に不安になる。
ここ、朔が来なかったらもっと早く亜紀が崩壊していただろうな…。
絶妙なタイミングで朔が亜紀を見つけるけれど、真島はとっくに亜紀が白血病だと気付いていたものね。言わなかっただけ、真島は偉い。若い二人の「彼氏です」「朔ちゃん!……彼氏です」という初々しい遣り取りを笑っていたし。
亜紀は真島と仲良くなり、闘病生活の辛さを話しに真島の病室までやって来ると、真島に詩を渡す。その詩は、亜紀が朔と出会ったあの日に亜紀が弔辞で読んだアポリジニの詩だった。
そして真島の持っていた医学書を見て亜紀は愕然とする。
真島は亜紀の辛さを引き立たせる為だけだったの?と思ったが違った。真島の気持ちを受け取った亜紀のアポリジニの絵本が最終話で朔を救うことになるんだから。
朔がわざと持って来なかった(のを察した)亜紀が、真島の机に上にあった医学書を「見せて下さい」と言って真島が一瞬戸惑うんだよね。でも貸す、と言うことは「真実は先に知って置いたほうがいい」という先輩からの助言だったのだろうか。
亜紀が「再生不良性貧血」という病名を医学書で探しあてる、しかしそこには「バカにすんな!」と大きな文字で書かれていた。医学書の持ち主は真島である。つまり、真島も最初は再生不良性貧血という偽りの病名を教えられたのだ。
真島の優しさが現れているのが、それを知り不安になった亜紀に「でも、廣瀬さんがそうだとは限らないよ。現に、再生不良性貧血っていう病気も存在するわけだし。」と言う言葉だったと思う。
次の日、亜紀は病室に来た朔に「私、白血病なんだって。先生に聞いちゃった。」と嘘をつく。亜紀の言葉を受けて動揺し「でも、亜紀の両親も悪気があったわけじゃなくて、」と朔は見事に亜紀のかまに掛かって亜紀が白血病だということをバラしてしまう。
これ、やっちゃうんだよね……本当は知りたくないのに。
亜紀は勘の鋭い子だから誰かを引っ掛けて告知される前に病名を知るとは思っていたけど、まさか恋人にかまを掛けるとは……。でも、ここで亀裂の入らない二人が切ないなぁ。
「嘘つくの疲れたでしょ?」と朔を気遣いながらも不安でいっぱいの亜紀と、完全に落ち込んでいる朔。しかしそんな朔に亜紀は「ありがとう、朔ちゃん」とまで言うんだもの、朔も責める訳にはいかなくなるだろう。
朔は亜紀の両親に本当の病名をバラしてしまったことを告げ、亜紀の両親に感謝の言葉を言われるが朔は更に落ち込んでしまう。
亜紀の両親は、最愛の娘に向かっての白血病という病名の告知という残酷な任務を朔が果たしてくれた事によって、少しは肩の荷がおりたということもあって「ありがとう」と言ったのだろうけど、朔の心には深い傷が残っただろうな……。
最愛の人を苦しめる言葉を放ったのは、他でもない自分なのだから。
その夜、亜紀は病室で修学旅行のファイルを床に叩き落とし、拳を握りながら「何で…何でさ……」と堪えるように泣く。
亜紀って、多分普通の高校二年生より精神年齢が高いし、強気な性格も災いしてか気丈に振る舞うのよね周囲には……。だからこそ、こういう一人の時に爆発してしまうんだと思う。修学旅行になんて行ける筈がないのに、と思った亜紀のやるせなさは筆舌に尽くし難い。
しかし次の日、一時退院が許された亜紀はケロリとした顔で学校へと登校して来る。驚くクラスメイトと谷田部先生。そして勿論、昨日のことを知っている朔。
亜紀ってこういう子なんだよなぁ……。切ない。
続きます。
コメント